7月17日。新聞とテレビで流れたニュースに驚いた。時代の流れは過去の常識を覆しながら進むものか。
今や全世界27億人が利用しているフェイスブック(FB)が2020年に「リブラ」という新通貨を発行、小口決済手段としてグローバルに普及させる計画を打ち出したという。リブラは価格が乱高下するビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)とは異なり、価格が安定しているデジタル通貨、電子マネーに近いものとなるらしい。法定通貨に近い安定性を持ちながら、インターネット上で資金のやりとりができる。それもほぼ手数料なしで可能になるのだそうだ。世界市民にとってこれはメリットか?それとも…。
アフリカなど新興国には、インターネットを使える環境にあるが、銀行店舗が近くにない、また、お金がないために銀行口座を開設できない人が17億人も存在するため、これらの人達に金融サービスを提供する地球規模のインフラを目指すという。
また、出稼ぎ労働者が本国に送金する場合、送金額の平均6.9%の手数料を負担しているという現実。これらの人々にとっては願ってもないメリットだ。リプラを使えば、18歳以上であれば、安価な手数料で安心、確実に迅速な国際送金が可能になるというのだから。グローバルに低コストでの資金移動。それも瞬時にできるとなれば、世界経済は活発になること疑いなし。
しかし、この計画に対し、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議も、民間企業が独自通貨を導入することに懸念を表明。この計画に待ったをかけているようだ。当然である。FBに関しては、利用者の個人情報が大量に流出した事実もある。信頼性に問題ありだ。更にFBはグーグル、アマゾンなど共に銀行業務全般に進出す構想さえ持っているとの報道もある。地球人口の3分の1ともいわれるFB利用者がリブラを一斉に使用すれば、膨大な個人情報や資金のやりとりに関するデータ、世界にまたがる多大な資金が当該企業集団に集中することになる。お金は権力の代名詞。世界中のお金を一手に動かせる権限をこれら特定の民間集団に与えていいものだろうか。現行の銀行制度はどうなるのか。犯罪に悪用される可能性も否定できず、懸念は尽きない。